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星の冠をあなたへ 最終回

by 古蝶 茉莉花

王冠を頭に乗せたアルマ・・・いや、レグルスはとても美しく誇らしげだった。

レグルスとの別れは辛いけれど「また会える」望みを持つことを教えられ、私は地上に降りた。

最後に私が出した答えは──

 気がつけば私は一人、河川敷の空き地の真ん中に立っていた。レグルスと戴冠式をした場所だ。

 川向こうのビル群の存在が懐かしく思えた。真夜中ではあったけど、空は街明かりでほとんど星が見えなかった。獅子座流星群もこの街では遠い存在のようだ。

 足元には王冠を収める箱が残っていた。王冠を出した時に開け放したままにしたはずの箱は、いつの間にか閉まっていた。

 取っ手を握り、そっと持ち上げる。ころころと中で何かが転がる音が聞こえた。

「えぇっ!」

 私は思ってもいなかった突然の異音に驚いて、慌てて箱を降ろし開いた。

 王冠の部品はどれもキチンと縫い付けたはず、彼にかぶせる時もなんの違和感も無かった。その筈なのに。

 勢いよく蓋を開ける。河川敷は街灯も何も無い薄闇で、私は音の犯人を見つけるために、箱の中を両手で隅から隅まで這わせた。ヒヤリとした硬いものが右手に当たった。

 そっと拾い上げると、それはどうやらビー玉を二回りほど大きくしたガラス玉のようだった。ガラス玉は薄闇の中で鈍く光っていた。

 それが王冠の部品では無かったことを確認すると右手で握りしめ、箱を持って土手の階段を登り、街灯の下へと急いだ。

 街灯の下で手をそっと開くと、それはまるで宇宙を閉じ込めたかのような、細かな砂のような星々が浮かぶ玉だった。よく見ると中心には見慣れた星座が浮かんでいた。

 獅子座だ。

 ビー玉を光に透かして覗くように、星座を閉じ込めた玉を街灯に透かしてみると、中の小さな星々は光を反射して一層と輝いた。

「素敵なお礼ね。」

 私に依頼した時、彼は確かに言っていた。『礼はする』と。突拍子もない、神出鬼没で少々強引なライオンは、とても律儀なライオンだった。

 私はクスクスと笑いながら家路を歩いた。

 陽気な日差しが降り注ぎ桃色の花が街を賑わせる頃、私は仕事を辞めた。

 機械の部品を作ったりする仕事は、物作りをする私にはとてもやり甲斐のある、楽しい仕事ではあったけれど、残業に次ぐ残業と休日出勤は今の私にはとても耐え難かった。

 もっとたくさんの作品を作りたい。

 多少お給料は下がっても、時間に余裕のある仕事を探すことにしたのだ。

 それを将来の生業にするかは分からない。けれど、自分の作品がたくさんの人を喜ばせられるなら、こんなにも素敵なことはないと思う。

「望むことが大事。何事もね」

 朝の河川敷は優しい日に照らされ、瑞々しい空気で満ちていた。私はその空気で肺を満たすように吸い込み、吐き出しながら呟いた。

「手に取ってくれる全ての人が幸せになれるように。大切に作るよ」

 私は俯き、白いブラウスの襟元を飾るリボンをそっと撫でた。

 リボンの結び目に下がる宇宙の玉は朝日でキラキラと輝いていた。

 獅子王の瞳のように。

最後までご覧くださり、誠にありがとうございました。

                     古蝶 茉莉花・紅鴉丸

写真 イラスト フリー素材「AC」

一部写真 紅鴉丸

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